あなたはラーテルという生物の名をご存知でしょうか?
日本ではあまり馴染みのない生物ですが、ラーテルは学名:Mellivora capensisと言い、別名ミツアナグマ(蜜穴熊)とも呼ばれています。
実は世界的にはかなり有名な生物で、それもそのはずギネスブックに認定されているのです!しかもそのキャッチフレーズが『世界一怖いもの知らずの動物』という、これを聞いただけではちょっと『????』となってしまう内容なのです。
上の画像を見る限りそんな雰囲気は漂ってきませんが、実はラーテルには『世界一』を名乗るにふさわしい、数々の秘密があるのです。
今回はそんな『最強!』と名高い、ラーテルについて見ていきたいと思います。
目次
ラーテルとは?
ラーテルはネコ目(食肉目)・イタチ科・ラーテル属の生き物で、平たく言えば日本でもなじみの深いイタチの仲間です。
- 体長=約60㎝~80㎝(尻尾を除く)
- 体重=約7㎏~14㎏
分かり易く言えば、柴犬くらいの大きさの動物です。
生息しているのはアジア大陸およびアフリカ大陸のサバンナや乾燥した草原、砂漠、森林などです。
群れは形成せず単独、もしくはつがいで行動し、基本的には夜行性ですが昼間に活動している姿も良く見られます。
ラーテルの食べ物
ラーテルは雑食性で小型の動物(虫・両生類・爬虫類・小型哺乳類)などを好んで食べ、果実なども食べます。
またハチミツが大好物なのですが、そのハチミツを捕食するために、ミツオシエ(蜜教え)という小型の鳥と共生していることでも知られています。
ウロコミツオシエ
出展:https://www.flickr.com/photos/rainbirder/6816361704/
その共生の仕組みが実によくできたもので、ハチの巣を見つけたミツオシエは大きな鳴き声を上げながらラーテルの周りを飛び回り、ラーテルはこれを追いかけます。
するとミツオシエが飛んで行った先にはハチの巣があります。ハチの巣を見つけたラーテルは瞬く間にハチの巣をこわしてハチミツにありつくのですが、ミツオシエはこのおこぼれを頂くという算段です。
- ミツオシエ=ハチの巣は発見できるがハチミツを取り出す(巣を壊す)ことはできない
- ラーテル=ハチの巣は発見できないが、ハチミツを取り出す(巣を壊す)ことができる
これらが自然界の中で見事に融合し、共生という関係が成り立っているのです。
出展:https://www.youtube.com/watch?v=tu0s4s1E0vU
ラーテルは普段、馬のような走法で広範囲を渡り歩き、目に入った捕食対象を手当たり次第に口にしています。
またパッと見はかわいらしくも見えるのですが、鋭い牙と発達した鉤爪を持っており、穴を掘ることも木に登ることも得意です。
またそれらは時には強力な武器にもなります。
出展:http://insolitanaturaleza.blogspot.jp/2013/07/ratel-o-tejon-melero-mellivora-capensis.html
ラーテルが最強である秘密
しかしいくらこれらの武器を持っていたとしても、所詮は1m足らずの小さな生物。なぜラーテルが『世界一怖いもの知らずの動物』などと呼ばれ、ギネスにまで認定されることに疑問を感じませんか?
そこにはラーテルがまだまだその小さな体に秘密兵器を隠していることと、それによる恐るべき耐久力を兼ね備えていたからなのです。
硬くて柔軟な皮膚
ラーテルの体は非常に分厚い皮膚で覆われており、特に頭部から背中にかけては非常に高い伸縮性を併せ持っています。それはまるで分厚くて伸び縮みするゴムシートのようなものなのです。
つまりこれは『猛獣などの鋭い牙や爪が皮膚を貫通しない』ということを意味するのです。
ラーテルはライオンなどの敵に襲われた時、なるだけ姿勢を低く構えて背中を襲わせるようにします。そして隙を見て相手に顔や手足に反撃。さらに相手がひるむと立ち向かっていく獰猛さも併せ持っているのです。
コブラの毒も効かない
さらにラーテルは好んで爬虫類も捕食するため、コブラなどの蛇類を見つけるとすぐさま襲い掛かるのですが、万が一噛まれてしまっても死に至ることはありません。
これはラーテルがコブラ科が持っている神経毒に対し強い耐性を持っているためで、一時的には動けなくなってしまいますが、数時間も経てば回復してしまうのです。
この動画の最後の部分では、コブラに噛まれて行動不能になったラーテルが、再び活動を再開する様子が映されています。また好んでヘビを捕食する様子も良くわかります。
つまりラーテルが最強・世界一怖いもの知らずの動物と言われる裏には『とんでもなく耐久力の強い生物である』という秘密が隠されていたのです。
そして当のラーテルもそれを分かっているのか、ライオンやハイエナ、時にはアフリカスイギュウに立ち向かっていくこともあるのです。
ラーテルは飛び道具も持っていた!
さらにラーテルは飛び道具まで兼ね備えていたのです!それは肛門の近くに備わっている臭腺。そこから強烈な異臭を放つガスを発射するのです。
あの有名なスカンクと同じ要領ですね。これは直接顔にかかったりすると非常に危険で、時には何日も涙が止まらないといった症状をも引き起こしてしまい、それはラーテルを襲う猛獣にも同じことが言えます。
ラーテルが兵器に!
このラーテルの耐久力、日本ではまだまだ馴染みがありませんが、現地では古くから知られています。そしてそれは兵器の名前にも使われるほどだったのです!
出展:http://combat1.sakura.ne.jp/RATEL.htm
地面を這うようなフォルムと上部の硬い装甲が、いかにもラーテルといった感じです。
ラーテルは子供の人気者?
こんな不思議生物ラーテルですが、実は既に日本でも大活躍しており、しかも子供たちに人気があることはご存知でしたか?
Eテレで2011年からスタートした『おかあさんといっしょ』の人形劇『ポコポッテイト』。その主人公であるムテ吉はなんとラーテルだったのです。
出展:http://www.nhk-character.com/chara/pocopoco/
さらにハチミツが好きでヘビに噛まれても大丈夫。名前も『ムテ吉』・『ムテキチ』・『無敵』を連想させるようで、ラーテルの特徴が盛り込まれています。
ラーテルに天敵はいるのか?
こんな無敵ぶりをいかんなく見せつけてくれるラーテルですが、果たして天敵と呼ばれるものは存在しているのでしょうか?
自然界ではやはりライオンが天敵となってしまうでしょう。いくらラーテルの皮膚が分厚くても、運悪く裏返し(腹部を狙われる)ことになってしまえば、さすがに成す術もありません。
実際、このような形でライオンにやられてしまうこともあるようです。
後は生息地域によれば、ナイルワニにも歯が立たないでしょう。
しかし現実的には人間も天敵であり、環境変化によりその数は減少しているとのこと。ラーテルの本当の天敵は、人間と地球そのものなのかもしれません。
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