今年は日本各地でツキノワグマの目撃情報と人身被害が発生しています。
昨秋のドングリなどの木の実が豊作であったため今年はツキノワグマにとって出産ラッシュとなったこと、春先から主食としているタケノコなどが不足し人里近くまで行動範囲を広げていることなどが主な原因となっているようです。
しかし今年は秋田県において4人の方々がツキノワグマにによって命を落とし、さらに食害まで見られるという近年稀に見ない深刻な事態に陥っています。
そこで今回はツキノワグマの生態について、特に人間を襲う理由とその大きさについて見ていきたいと思います。
目次
ツキノワグマはどこに住んでいる?
日本には2種類のクマが生息しています。
- 北海道に住むエゾヒグマ
- 本州・四国に住むツキノワグマ
生息の分布を図で見てみると以下のようになります。
出展:http://www1.gifu-u.ac.jp/~rcwm/bear_research.html
ツキノワグマは中部地方から北陸地方にかけて多く生息しており、関西より南にはあまり多くは見られません。特に九州地方では以前は見られたものの現在では絶滅しています。
ツキノワグマの生態
ツキノワグマの特徴はやはり胸部に見える三日月型の白い模様ですね。これが名前の由来にもなっていますが、別名はアジアクロクマ、ヒマラヤグマなどとも呼ばれています。
ツキノワグマは基本的には夜行性ですが、食料を求めて昼間に行動することもあります。
またその食性は雑食性で、多くは植物性の餌を捕食していますが、アリやハチなどの昆虫、イノシシやシカなどの肉も食べています。
それではツキノワグマの1年の行動を見ていきたいと思います。
春
冬眠から目覚めたヒグマは新芽、花芽などを主に食べています。またこの時期には冬に餓死したシカの死体なども多く見られるため、それらを食べているところも多く目撃されています。
また5月頃になるとタケノコを好んで食べます。
夏
野生のサクラやイチゴの実、またその他の果実やアリ、ハチ、カブトムシ、クワガタムシなどの昆虫も好んで食べます。
またこの時期になると花芽を追って標高3,000m付近の高い地域まで上がってくることもあります。
なお交尾はこの時期に行われます。
秋
冬眠に備えドングリ、クリなどの木の実を大量に捕食します。またこの時期には大量の食糧が必要となるため、人里近くに現れたり畑などを荒らすこともあります。
冬
森林の樹洞や洞窟などで冬眠しています。メスはこの時期に出産し冬眠しながら授乳を行います。
ツキノワグマの大きさは?
さて、一般的には『小型のクマ』と紹介されることが多いツキノワグマですが、実際にどれぐらいの大きさなのか?見ていきたいと思います。
- 体長:120㎝~180㎝
- 体重:オス=50~120㎏、メス=40~70㎏
う~ん、分かったような分からないような、、、、
そこでこんな画像を見つけてきました。
出展:http://www1.gifu-u.ac.jp/~rcwm/bear_research.html
十分大きいじゃないですか!?
そこら辺の大型の犬とは比べ物になりません。ちなみにWikipediaによれば過去に確認されている最大体重は173㎏とのこと。これはほとんどヒグマですね。
ツキノワグマが人を襲う理由
冒頭にも記載しましたが、今年は山形県で4人もの人が僅か20日間の間にツキノワグマに襲われ命を落とすという事件が発生しています。またそれぞれに食害の痕跡が見られたことから、
- ツキノワグマが人の味を覚えた
- 食べるために人を襲っている
などという見方も出てきているようです。
しかしツキノワグマは本来捕食の為に他の動物や人を襲うということは滅多に見られません。イノシシやシカなどの肉を食べる場合もほとんどが死肉を食べるというケースで、捕食の為に動物を襲うといったことは、自然界でも稀なケースなのです。(時には見られますが、非常に少ないです)
出展:http://tukinowaguma.net/archives/1343
今回の一連の事件で最も謎であり不安要素でもあるのは、
- 食べるために襲ったのか?
- 襲った結果食べたのか?
今回の一連の事件で被害に遭われた方々は、いずれもタケノコ採集に出かけていました。これはつまりこの時期のツキノワグマの主食でもあるのです。
繁殖期を迎え気が立っているオスのツキノワグマや、出産し小熊を連れたメスのツキノワグマが自分の食事を荒らしている他の動物を見たらどのような行動を起こすのか?もちろん追い払う、襲い掛かるのどちらかです。
しかも襲われた人がツキノワグマに背を見せて逃げようなどとすれば、、、、。クマは逃げるものを追いかけるという、まるでネコ科の動物のような習性を併せ持っています。
そして相手が動かなくなるまで攻撃すれば、そこにあるのはイノシシやシカの死骸と同じなのです。
それはツキノワグマにとってはただの食糧でしかありません。
ツキノワグマに出会ったら?
『クマに出会ったら死んだふり』
これが迷信であることは皆さんご存知ですよね?
一般的にツキノワグマと出会った時の対処法として紹介されているのは、
- ツキノワグマに背を向けずゆっくりと後退する。
- 出会ってしまったら大声を上げない。走ったりカメラのフラッシュも厳禁。
- もし襲われた場合は両腕で顔や頭をガードする。
- 隙を見てツキノワグマの鼻や目などを攻撃する。(ひるんで逃げ出す可能性が高い)
などが言われていますが、こんなのが目前に現れて冷静に行動できるでしょうか?
見て下さい、この太い腕と大きく鋭い爪。
出展:http://tukinowaguma.net/archives/1343
さらにはこんな動画も。
出展:https://www.youtube.com/watch?v=Lia-RYWPpqs
そしてツキノワグマの迫力が伝わってくる動画。
出展:https://www.youtube.com/watch?v=OvrD0J-SmUE
挙句の果てには木の上まで追いかけてきます。
出展:https://www.youtube.com/watch?v=I0AJJg53-mA
体が大きくて鋭い爪と牙を持ち、木登り・水泳もお手の物。さらには陸上を時速40㎞/hで走る俊足の持ち主。 こんなのに人間が襲われてただで済むわけがありません。
最後に
これ以上ツキノワグマによる被害を増やさないために私たちにできることは、『できるだけツキノワグマと遭遇する機会を減らす』ということだけのようです。
もちろん目撃情報は人の住む地域まで及んでおり不安要素もたくさん見られますが、ほとんどのケースでは人を見るとクマの方から逃げて行っています。(安全な場所からだと大きな音を出してクマを追い払うことも可能です)
また統計によればツキノワグマによる被害はそれほど多いものではなく、今年のような事態は異例であることもわかっています。
参考サイト⇒岐阜大学 ツキノワグマ研究
ツキノワグマは大昔から日本に生息している貴重な動物であることも事実で、地域によっては絶滅が危惧され捕獲も禁止されています。(九州では過去に絶滅しています)
人間とツキノワグマ、共存するにはお互い出会わないようにするのが最善の策だと思われます。
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