バイクのユーザー車検、経験のない方にとっては、とても難しいものに思えてしまうことでしょう。
また予備知識や経験があったとしても車検は2年に一度。さすがに2年前のことを詳しく覚えているかというと、、『????』これが現実でしょう。
もちろん皆さんが保有されているバイクがノーマルであるのか?改造個所があるのか?で車検の難易度は変わってしまいますが、『ノーマル車両』や『ライトカスタム』程度なら、ユーザー車検はそんなにく難しいものではありません。
そこで今回はユーザー車検の際に特に注意する点や、ついうっかり見落としてしまいがちな点についてまとめてみました。
なおユーザー車検の詳細については、こちらの記事を参考にしてください。
↓ ↓ ↓
・バイクのユーザー車検 予約から受験までを徹底解説!(準備編)
・バイクのユーザー車検 予約から受験までを徹底解説!(実践編)
目次
あなたのバイクはノーマル?カスタムしてある?
まず大前提としてこちらを確認しておいて下さい。
一般的にフルノーマルの車両であれば、基本的な点検整備がされていれば車検に通らないということはほとんどありません。
しかしカスタムされた車両は様々な面で内容が変わってくるため、その箇所が車検に通らない(保安基準に適合しない)可能性が出てきます。
中には「たったこれくらいのことで?」と思ってしまうような内容もあります。
それでは次に車検の際に特に注意が必要な項目、見落としてしまいがちな項目について見ていきたいと思います。
検査項目
車検時の検査項目は多岐にわたりますが、ここでは特によく見られる項目、チェックされるポイントについてご説明していきます。
ヘッドライト
これはテスターで計測するもので、『光軸』と『光量』の2点に注意が必要です。
光軸
特に光軸に関しては目で判断しようとしても基準が分かりにくいので、事前に専門業者で計測してもらうか、バイク屋さんで点検・調整を依頼しておいた方がいいかもしれません。
参考までにご説明しておくと、バイクのヘッドライトは『ハイビーム』で光軸と光量を測定します。また基準としては『100m先をまっすぐ照らす』となっています。
ただしバイクの場合は車種によってもヘッドライトの高さが違います。よく行われている方法としては、
- バイクを垂直(スタンドを跳ね上げて跨った状態)にして、地面からヘッドライトの中心までの高さを測る。
- 身近に壁があれば先程計った高さに印をつける。
- 壁から約1m離れた場所からその印をハイビームで照らしてみる。
- 光の中心が印に合っているか?確認する。
もちろんこの時は壁に対してバイクをまっすぐ向けるようにして下さい。また少しわかりにくい時は、ライトを数回、ハイ・ローと切り替えてみて下さい。
光量
光量に関しては2000年以降の車両であれば、
- ヘッドライトレンズや内部(反射板)が汚れたり変色したりしていない。
- ライトバルブ(電球)が変色していない。
この2点に注意していれば問題はないでしょう。
しかしそれ以前の年式のバイクの場合は、光量が不足している場合が多く見られます。その際は諦めてプロにお任せした方がよさそうです。
また近年主流となってきている『HID』や『LED』に関しても、上記2点の基準をクリアしていれば車検は問題ありません。
ウィンカー
こちらは通常通り作動していれば問題ありません。ただカスタム等によって点滅速度が速すぎたり遅すぎたりするのはいけません。
またカスタムで社外品に交換されている場合は注意が必要です。この場合はそのものの大きさや取り付け角度によって『視認面積不足』とされてしまう場合があります。
また色は『オレンジ』でなくてはなりません。そのためウィンカーレンズがクリア(透明)の場合は、ウィンカー球はオレンジのものを装着しなければなりません。
テールランプ
こちらはフロントブレーキとリヤブレーキ、それぞれで点灯しなければなりません。もし2灯式の場合は、双方が点灯しなければなりません。
ちなみに最近はLEDを使用したものが多く見られますが、この場合は球が一つでも切れていると、車検には通りません。
ナンバー灯
ナンバープレートを照らす電球で、テールライトと併用されている場合もあります。実はこれが案外盲点で、ついうっかり見落としてしまうケースがよく見られます。
またフェンダーレスキットを装着している場合は、よく確認しておいて下さい。
ホーン
普通に鳴ればOKです。
車体寸法
ノーマル車両であれば問題ありませんが、『ハンドルを交換している』『ローダウンしている』『ノーマルスクリーンを社外品に変えている』等の車両は注意して下さい。
ちなみに車体寸法に関しては、規定では以下のようになっています。
- 幅=車検証記載寸法の±20㎜以内(主にハンドルの左右レバー幅)
- 高さ=車検証記載寸法の±40㎜以内(ミラーは含まない)
- 全長=車検証記載寸法の±30㎜以内(主にフロントタイヤの先とリヤフェンダーの一番出ている部分)
この数値を超えてしまうと、別途『構造変更』の手続きが必要になります。
二人乗りの装置
車検証記載の乗車定員が2人となっている場合は、以下の装備が必要です。
- 後部座席(シート)
- 後席用のステップ(タンデムステップ)
- 後席用のベルトもしくは手すり(シートに備え付けられているベルトもしくはタンデムグリップ)
特にスーパースポーツモデルでは普段後部座席を、シングルシートカウルに付け替えている場合がよくあります。ユーザー車検に行く際は、タンデムシートに戻しておくことをお忘れなく。
排気ガス検査
こちらは検査の対象になる車両とならない車両があります。年式による判断もできますが、一番わかりやすいのは車検証の『形式』を確認することです。
例えばホンダのCB400を例に挙げて説明すると、
- BC-NC39
- EBL-NC39
という風に、NC39の前にBCやEBLといったアルファベットが追記されています。この文字が追記されている車両が『排気ガス検査の対象車両』ということです。
ちなみにBCとEBLの違いは、施行された排気ガス規制の年度、基準値による違いのもので、EBLが最新の基準となっています。
これはキャブレターのセッティングやスパークプラグ、エアクリーナー、エンジンオイルのメンテナンス不足で、Co値やHC値が基準値から外れてしまう場合があります。その際は点検・整備が必要です。
マフラー
先の排気ガス検査とも関わってきますが、マフラーを社外品に交換されている方は非常に多いと思います。
ノーマルマフラーであれば問題となることはほとんどありませんが、マフラーを交換されている方は以下の内容を確認しておいて下さい。
- 自分のバイクの年式、及び型式
- 車検対応のマフラーであるのか?
- 排気ガス
- 排気音量
- 加速騒音
- ノーマルマフラーの触媒の位置
これらによって車検の基準は変わってくるのですが、この項目は説明が非常に長くなってしまうので、また別の記事で説明させて頂きます。
ただ押さえておいて欲しいのは、排気ガスも排気音量もその場での実測値が重要であるということです。例えノーマルマフラーであっても、実測値が基準から外れていると車検には通りません。
エンジン
当たり前のことですが『エンジンがかからない!』などというのは論外です。またたとえエンジンがかかっていても『走行不能』であれば車検に通るわけもありません。
またエンジンからの多量のオイル漏れや冷却水漏れが見られた場合も、車検に不合格となってしまいます。(垂れないレベルのにじみは問題ありません)
タイヤ
ひび割れのひどいものや、完全にスリップサインが出てしまっているものは、当然のごとく不合格にされてしまいます。またエア漏れなどは論外です。
特にタイヤに関しては『センターの溝が全く無い!』という状態では、100%不合格になってしまいます。
念のために『スリップサインが出ていたら交換』ぐらいの感覚で、ユーザー車検に臨んだ方が無難でしょう。
チェーン
『さびさび』『ダルダル』状態でなければ問題ありません。基本メンテナンスをしっかりしていれば、問題ありませんね。
サスペンション
フロントフォーク・リヤショックについては、普通に作動していれば問題ありませんがオイル漏れがあった場合は不合格となってしまいます。
特に作動状態を見られることはほとんどありませんが、オイル漏れだけは要注意です。
ブレーキパッド
ブレーキパッドには決められた規定残量というものがありますが、実際の車検で外して残量を測定するということはまずありません。
外から目視で確認するのみですので、通常であればほとんど問題はありませんが、パッドがすり減って金属のベースプレートとディスクが当たってしまっているものはアウトです。
ブレーキホース
これはオイル漏れがあるとアウトですが、案外見落としてしまいがちなのは車体との擦れによるホース被膜の痩せなどです。
ノーマル車両ではほとんどありませんが、外品ホースに交換している場合は要注意です。ホースの擦れ、皮膜の痩せなどがあった場合は車検に通りません。
ついつい見落としてしまいがちな項目
以上、車検時の主な検査項目について列挙してみましたが、次に実際に検査場でよく見られる『ついつい見落としてしまいがちな項目』について挙げて行きたいと思います。
ハンドルロック
実はこれも備え付けられていなければ車検には通りません。
特にアメリカンのバイクでよく見られるメインキーとは別にハンドルロックが取り付けられているバイク。カギを忘れて行っただけでも車検は通りませんよ!
また改造等でノーマルのハンドルロックが取り外されている場合は、別途ハンドルロックを取り付ける必要があるのですが、この際は『車体に備え付けられている』という条件があります。
ワイヤーロックなどの単体で取り外せるものはハンドルロックとは認められません。ボルト等できちんと車体に取り付けられていることが必要条件です。
リフレクター
車体後部に取り付けられている反射鏡のことです。特にフェンダーレスにされている方は事前に確認しておいて下さい。
シフト表示
ミッション車では左足元シフトペダル付近に、必ずシフトパターンの表示がされています。刻印やシールの場合もあるのですが、
『1・N・2・3・4・5・6』などのようなものです。
実はこれが剥がれていたり、バックステップに交換したりスプロケットカバーを交換している場合など一緒に取り外されている場合は、車検に通らなくなってしまいます。
この際は『自作でシールを作って貼る』『マジックで車体に直接書く』などをして、必ず表示をしておいてください。
フォグランプ
これはノーマルではまず取り付けられていることはありませんが、現在はメーカー純正のオプションも多数出てきています。
純正オプションであれば問題ありませんが、取り付けられている際は
- 正面から見てヘッドライトより高くない位置
- ON・OFFスイッチの取り付け
- スイッチのON・OFF表示
以上がしっかりされていることを確認しておいて下さい。
その他電装品
ポジション球や車幅灯、これらを色付きのものに交換するのはNGです。また追加で車幅等を付けたり、ネオン管やLEDなどの電飾を張り巡らせていても車検には通りません。
もしこれらが見られた場合は、事前に取り外してからユーザー車検に臨みましょう!
ユーザー車検に合格する裏技
それでは最後に私から皆さんへ『ユーザー車検に合格する裏技』を伝授したいと思います。(スイマセン、、、言い過ぎました^^;)
裏技ってほどではないかもしれませんが、やってみると効果はありますよ!
バイクは洗車してからユーザー車検に行こう!
これには2つの意味合いがあります。
- 洗車することによって事前に不具合を発見できる。
- 綺麗なバイクは検査員にとっても『よく整備されているバイク』に見える。
ユーザー車検前に洗車をして少しでもバイクを磨いてあげれば、意外と気付かなかった不具合も目に飛び込んでくるものです。
また検査員も結局は人間なんです。検査ラインに入ってくるバイクを見て『よく整備されているな』と思ってしまえば、細かくチェックするということもしないものです。
検査員の指示に従う
これは先の『2』にも共通するのですが、機械による判定はどうすることもできませんが、目視は検査員がするものです。
検査員の指示に従わなかったり、検査に不服を申し立てたりしているケースが良く見られますが、はっきり言ってこれらは全て『逆効果』です。
冷静に考えてみて下さい。検査員は『あなたのバイクを検査に落とそう』などとは、全く考えていません。考えているのは『保安基準に適合しているかどうか?』ということだけなのです。
そしてその適合に関しては『許容範囲内』というものがあり、それらは全て検査員の目視によって行われているのです。
車検は一度ラインで不合格が出たとしても、『1日に3回までラインに入ることができる』となっています。つまり1日に3回チャンスがあるわけです。
なのに不合格に文句を付けたりすると、それはつまり2回目3回目に『許容範囲を狭くする』という行為に他ならないのです。
むしろ『合格へのアドバイスを貰える』ような姿勢で検査員の指示に従うのが、間違いなく合格への早道なのです。
バイク屋さんを味方に付けよう!
これは正直心強いですよ。
ユーザー車検を受ける際は、初心者であればあるほど一番前に並ばずあえて3番手、4番手で臨むことをおススメします。そうすることで前の人の手順を観察することができますからね。
またそうして順番待ちをしている間に『バイク屋さんらしき人』を見つけたら、積極的に話しかけて不明な点を聞いておくのも有効な手段です。中には初心者だと知ったら、横についてアドバイスしてくれる人もいますよ!
この時も先の検査員の場合と一緒で、
「なあ、これどうするん?」なんて聞き方はいけません。
普通に「ちょっと教えてもらえません?」で十分です。
人間として当たり前のことですし、基本バイク屋さんはサービス業ですから、ついつい頼まれると嫌とは言えない人が多いものです。
それに加えて数え切れないバイク、それもノーマル車両からカスタム車両までの車検を通してきたプロですから、その人たちを味方に付けない手はありませんね!
最後に
私のこれまでの経験を元に、ユーザー車検を受ける際のポイントについてまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?
あれもこれもと思いがちですが、ノーマルの車両であれば10分もあれば十分確認できるはずです。もちろん整備必要箇所が出てきた場合はそれ以上になってしまいますが、普段から点検・整備に気を遣っている方にとっては、造作もないことでしょう。
ユーザー車検は思っているほど壁の高いものではありません。
『受けてみようかな~』と思われている方は、思い切ってチャレンジしてみて下さい!
費用も安く済みますよ~!
参考記事
コメント
分かりやすい解説有難うございました。
当方CB750(RC42)で今年車検を迎えますが、バルブシール劣化によると思われ、アイドリング時マフラーから煙が出ます。
これは車検時の排気ガス検査での不適合になりますか?型式が、BC-RC42です。
アドバイスよろしくいお願いします。
佐竹良市様
はじめまして。
アイドリング時にマフラーから煙が出るということですが、
『煙が出る』
ということだけで不適合になるわけではありません。
まず車検時の排気ガス検査ですが、型式に『BC』がついている車両は
アイドリング時のCOとHCの数値が、以下のように定められています。
CO:4.5%以下
HC:2000ppm以下
そのため多少の煙が出ていても、
この数値さえクリアしていれば排出ガス検査は問題ありません。
ただそれ以外に、
『マフラーから煙が出ている』
ということ自体が問題とされる可能性もあります。
例えば
・あまりにも多量の煙を排出していると後方の視界を妨げる
・煙の排出自体がオイル・水漏れと同様、原動機の整備不良と捉えられる
などです。
ただ通常、使用できる程度の煙であれば、
問題視されることは殆ど見られないと思います。
COとHCの数値に関してはあくまでも検査時の『実測値』になりますので、
これはもし不安であれば事前に二輪車販売店や民間の測定業者さんで
計ってもらった方がいいかもしれませんね。
(ただ殆どの場合、有料です)
よろしければ参考にしてみて下さいね。