燃費データの不正問題で世間に大きな衝撃を与えた三菱自動車。代表取締役社長・相川哲郎氏の辞任(正式には2016年6月24日)や日産自動車による買収など、企業の再建に向けた動きは着々と進められていました。
しかしやはり世の中の人々にとって最も関心が高かったのは『購入ユーザーに対する補償』ではないでしょうか?
特に今回の問題の発端となった『ekワゴン/カスタム』『ekスペース』は、近年の軽自動車市場における『低燃費競争』の中で誕生した車であり、ほとんどの購入者が車種検討時に燃費を比較要素としていたことでしょう。
そんな中6月17日、ようやく三菱自動車からユーザーに対する具体的な補償内容が発表されました。
目次
三菱自動車の発表
それではまず、三菱自動車の発表内容を見ていきたいと思います。内容は車種・年式等により、大きく2つに分けられています。
『ekワゴン/カスタム』『ekスペース』
このたびの当社製軽自動車における燃費試験データの不正操作につきまして、お客様には多大なるご迷惑とご心配をおかけし、誠に申し訳ございません。改めて深くお詫び申し上げます。このたび、お客様への賠償額の考え方について、社内試験の結果を元に仮に計算した内容をご報告いたします。なお、今後、届出燃費値が確定した段階で、必要が生じた場合には、金額を見直します。
引き続き末永くご利用賜りたいとの思いから、今後のお客様のご使用年数に関わらず、燃費値が異なることによって生じる燃料代の差額や、今後の車検時等に発生する税額のお客様負担分等を踏まえ、お詫びを含めた賠償を一律に実施させて頂く予定です。お支払い要領の詳細につきましては、直接お客様宛てにご連絡させていただきますので、今しばらくお待ちくださいますよう宜しくお願い申し上げます。
1.対象
2013年6月から生産している『eKワゴン/カスタム』『eKスペース』を
2016年4月21日時点でご使用いただいていたお客様(自動車検査証記載の使用者様)2.損害賠償の内容
燃費値が異なることによって生じるお客様の以下経済的損失等
・燃料代の差額
・今後の車検時等に想定される税差額
・ご迷惑をおかけしたお詫び3.お支払い金額
1台につき10万円
*リース、残価設定型クレジットをご利用のお客様は契約年数毎に1万円
*過去ご使用いただいていたお客様は使用年数毎に1万円(注)新車購入時のエコカー減税率等が変更となった車両の追加納税義務については、
お客様にご負担をかけないよう、当社が責任を持って対応させて頂きます。三菱自動車工業株式会社
『過去10年間に販売した車両』
今般の一連の燃費不正問題につきましては、お客様には多大なるご迷惑とご心配をおかけし、誠に申し訳ございません。
このたび、「過去10年間に販売した20車種に関する調査」を実施した結果、5月18日の会見にてご報告済の現行販売車2車種に加え、過去に販売した3車種の一部の年式・型式につきましても、同様の走行抵抗を恣意的に改ざんする不正があったことが判明いたしました。
改めて深くお詫び申し上げます。当該車種の対象年式・型式のモデルに現在お乗り頂いているお客様に対しまして、お詫びの気持ちを込め、対象車両1台につき3万円をお支払いいたします。対象車両やお支払い方法などの詳細につきましては、準備が整い次第 当ホームページにてご案内させていただきます。今しばらくお待ちくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
なお、当該車種については、旧年式の車両であったり、生産を終了している車両もある為、正確な燃費値を確認することができない状態ですが、生産当時の検査記録にて届出燃費値をクリアしていたことを確認いたしました。
また、海外向け車両につきましても、法規にて定められた方法で測定を実施しており、不正操作が無い事を確認しております。1.対象
2016年6月17日時点で、以下車種の一部の年式・型式にお乗りのお客様
<5月18日報告済の現行販売車種>
・パジェロ (2006年に発売したモデル)
・RVR (2010年に発売したモデル)
<6月17日報告の販売終了車種>
・旧型アウトランダー
・ギャランフォルティス / ギャランフォルティス スポーツバック
・コルト / コルトプラス2.お詫び内容
対象車両1台につき、3万円をお支払いいたします。三菱自動車工業株式会社
補償内容のまとめ
上記の三菱自動車の発表をまとめてみると、
1.10万円の補償
2013年から製造・販売している『ekワゴン/カスタム』『eKスペース』(B11W)について、2016年4月21日時点で使用者であった方。
注)2016年4月22日以降に転売された方も対象になります。
*リース、残価設定型クレジットをご利用の方は契約年数毎に1万円
*過去ご使用いただいていた方は使用年数毎に1万円
2.3万円の補償
2016年6月17日時点で、以下の車種の一部の年式・型式の使用者の方。
- パジェロ(2006年発売モデル)
- RVR(2010年発売モデル)
- 旧型アウトランダー
- ギャランフォルティス/ギャランフルティススポーツバック
- コルト/コルトプラス
補償の受け方
現時点で詳細は決定されていませんが、10万円補償の対象の方については三菱自動車より直接連絡される予定です。
3万円補償の対象の方については年数の経過や中古車での転売も考えられることから、自己申告となる可能性が高そうです。
またいずれも実際の支払いについては、銀行振り込みになる可能性が高いということです。
ユーザーが受ける損失
さて、三菱自動車からは上記のような補償内容が決定され発表されましたが、今回の燃費データの不正によりユーザーは実際どんな損失を受けるのか?
大きく分けると以下の3つが考えられると思います。
1.ガソリン代
これは説明するまでもありませんが今回不正が発覚し、正規の方法で燃費を測定し直すとほとんどの車種でその数値が低下してしまいます。
これはもちろんユーザーにとっての損失となってしまいます。
2.税金
実際の燃費数値が落ちることにより、燃費基準の適合も変わってしまいます。これにより車検時の重量税額が変わるため、それが将来継続的に損失となってしまいます。
3.車両の評価額
これはつまり車両の査定額のことです。不正が発覚したことによりその車の価値は、間違いなく低下することが予想されます。
これについてはあくまで『想定』の要素を含んでおり判断基準は難しいところですが、これだけ世間で大問題を引き起こした車とあっては、下取り・買い取り相場価格が下落するのは避けられないと思われます。
ただここでは一つだけ注意点があり、今回の不正発覚、燃費数値の訂正により多くの車種で燃費基準が変更されます。つまり新車購入時に受けた『エコカー減税』の対象車種ではなくなってしまうという事態が発生してしまうのです。
そうなれば当然、追加納税義務が発生してしまうのですが、これについては先の三菱自動車の発表にもあるように、メーカーが全額負担するということです。
デリカスペースギアは補償の対象にはならない
ところでまたしても私の愛車・デリカスペースギアの話になってしまいますが、この車が不正の対象車種であったり補償の対象車種とされる可能性は、限りなくゼロに近いと思われます。
この車が製造・販売されていたのは以下の通りです。
- 前期型:1994年(平成6年)~1997年(平成9年)
- 後期型:1997年(平成9年)~2006年(平成18年)
確かに最終型が製造・販売されていたのは今から10年前ですが、後期型だけを見てみても形式指定(車両データを国土交通省に届け出した)を行ったのは19年も前のことです。三菱自動車では文書保管期間を10年としていることから、当時の正式な資料は残されていない可能性があります。
また『過去10年間に販売した車両』の項でもあるように、かなりの年数が経過しているため今更正確な燃費の測定をやり直すことができません。
以上のことからデリカスペースギアが補償の対象車になることは、まずあり得ないでしょう。
三菱自動車の補償は妥当なのか?
最後に今回発表された三菱自動車のユーザーに対する補償ですが、果たしてこれが妥当なのか?ユーザーは納得できるのか?
これについては意見は様々で、ネット上で様々な情報を見てみると、皮肉なことに圧倒的に多い要望としては『車両返品・全額返金』というもののようです。
ただこれに関しては保証規定や様々な法律が絡んでいるようで(あまり詳しくなくてスイマセン)、なかなか実現しそうにないというのが現状のようです。
ただ今回の一連の騒動を通じて思うことは、お金の問題より人々を騙していたという行為。人間として最も恥ずべき行為を大企業が行っていたということ。これに対する人々の怒りが何よりも勝っているように感じます。
日産自動車の傘下に入ったとはいえ、果たして企業体質は本当に改善されるのか?三菱自動車というブランドが世の中の信頼を取り戻す日はやってくるのか?
前途多難な日々はまだまだ続きそうです。
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