みなさんこんばんは、鷹です!
ゴールデンウィークあたりからかなり気温が上がってまいりましたね。
私は昨年までは自己採集したカブトムシ・クワガタムシを成虫・幼虫問わず常温飼育してきましたが、今年は外国産クワガタや幼虫の菌糸ビン飼育を行っているため、なかなか常温では管理しきれない状況となってしまいました。
これまで夏場は自宅内の一番涼しい場所(廊下)にて飼育を行ってきましたが、それでも真夏は30℃近くまで気温が上がってしまいます。
それに加え飼育種・飼育数も増え、飼育場所も室内に変更したことから、日中は平気で30℃を超えてしまいます。
そのため夏場の暑さ対策ということで、以前作成した自作温室の改良と、新たなクワガタの幼虫飼育用の保冷庫を作成しましたので、その様子をご報告させて頂きたいと思います。
注)今回の記事には電気等を使った工作・作業等の内容が記載されています。十分な知識・技術がなければ大変な危険を伴いますので、もしチャレンジされる方がいらっしゃる場合は、十分注意して下さい。
仮に事故・トラブル等が発生した場合でも当方では責任を負いかねますので、ご了承よろしくお願いします。
また、今回私が使用した用品は全てAmazonで購入したため、参考のためにリンクを張り付けておきます。
目次
ペルチェ冷却ユニット
夏の暑さ対策を行うにあたってはかなり以前から色々と調べていたのですが、今回、私が導入を決定したのは『ペルチェ冷却ユニット』というものです。
これは『ペルチェ素子』という部品を利用し、冷却や保温を行うために必要なヒートシンクやファンを組み合わせて作ったユニットのことで、今回、私が購入したのはこのような形をしています。
性能や品質を比較するために2種類同時に購入したのですが、基本的な原理はどちらも同じです。
上の画像で左から構成部品を説明すると、
- 冷却用ファン
- 冷却用ヒートシンク
- ペルチェ素子
- 冷気用ヒートシンク
- 冷気循環用ファン
という順番で組み立てられています。
ペルチェ素子とは?
ここで核となるのは、心臓部でもある『ペルチェ素子』です。
私は組み立て済みのユニットを購入したため外部からは見えませんが、部品単体ですとこのような形をしています。
これは白い板状の部品に取り付けられた赤と黒の配線に直流電気(DC)を流すことによって、片面は発熱し、反対面は冷却されるという特性を持っています。
またこの性質を利用して発電なんかもできるようですが、今回は少し話題がずれるので割愛させて頂きます。
ペルチェ素子は電気を流すだけで熱エネルギーを発生させることができるため、家庭用冷蔵庫のコンプレッサーのように大きな音を出すことがありません。
そのため室内で使うワインセラーなどでによく使われているようです。
しかし小さな部品の両面で『熱』と『冷気』を発生させるため、発熱側は常に冷却させる必要があります。ペルチェ素子そのものの仕様にもよりますが発生する熱は100℃を超えることもあり、冷却が追い付かないと簡単にペルチェ素子を破壊してしまいます。
そのため上の画像で紹介したように、ユニットとして組み立てられているものには、非常に大きな冷却用ヒートシンクと冷却用のファンが取り付けられています。
また発熱側の冷却が十分に行われなければ、反対側で発生する冷気も十分なものでなくなってしまいまうのです。
ペルチェ冷却ユニットの動力源
さてこのペルチェ冷却ユニットですが、動力源は家庭用電源(AC・交流)ではなく、直流電源(DC)となっています。
つまり通常の電化製品のように『コンセントに差して使用する』というわけにはいかず、室内で直流電源(DC)を供給するシステムを用意する必要があります。
それには様々な方法があるのですが、今回、私が導入したのがこちらです。
Youtumall AC DC 12V 直流安定化電源 コンバーター スイッチング電源変換器 S-360-12
これは家庭用コンセントにつなげて家庭用電源(AC・交流)を直流電源(DC)に変換させる機械なのですが、実際につなげてみるとこんな感じです。
ただこのユニット、使用前に一つだけ注意点があります。
側面から見るとこんな感じで、
さらにアップにしてみるとこのようなスイッチが取り付けられています。
ここを必ず『110V』側へスライドさせて切り替える必要があります。『220V』は海外での使用も想定して備えられていますので、必ずスイッチを『110V』にしておかないと、本来の性能が出ないばかりか、破損してしまう恐れもあります。
ちなみに日本では100Vですが問題なく作動します。
で、このユニット、取り出せる直流電源(DC)の電圧を、使う機器に合わせて変化させることができます。
マイナスドライバーを差しているアジャスターを左右に回すことによって電圧が変化します。
最小:9.97V
最大:14.79V
今回は使用するペルチェ冷却ユニットが定格12V の仕様のため、負荷による電圧降下等も考慮して12.33Vに合わせておきます。
ちなみに出力は30Aということですので、ペルチェ冷却ユニット3つを稼働させるには十分な性能です。
逆にこの手の製品を使う場合には、機器が10Aだからと言って10Aの製品を使うのは好ましくありません。安全面や安定した作動を考慮するなら、1.5倍~2倍、15A~20A の製品を使うのが鉄則ですね。
温度制御
さあこれで冷却の準備は整ったわけですが、あと一つ重要な部品が必要です。それが温度をある程度一定に保つ働きをする『サーモスタット』です。
以前、自作温室を作成した際は熱源にAC100V・300wのセラミックヒーターを使用したため、熱帯魚用のサーモスタットを流用して使っていたのですが、そもそも『温める』と『冷やす』ではサーモスタットの動きが逆になります。
- 温める=規定温度まで下がる⇒スイッチが入る⇒規定温度まで上がる⇒スイッチが切れる
- 冷やす=規定温度まで上がる⇒スイッチが入る⇒規定温度まで下がる⇒スイッチが切れる
といった感じで、『上がる』と『下がる』が逆に作動する必要があります。
しかも今回は使う機器が直流電源(DC)仕様のため、何か適当なものはないかと物色した結果、
SODIAL(R)DC 12Vサーモスタットサーモスタット温度熱センサスイッチ-50~110℃
こちらを導入することにしました。
こちらはサーモスタットそのものの作動電源も直流電源(DC)仕様となっているため、配線をまとめることもできるので、私にとっては好都合です。
ただし定格電流が10Aとなっているため、あまり出力の大きな機器には使用できません。
今回私はペルチェ冷却ユニットを3つ用意したのですが、それぞれが6A以上の電源を推奨していたため、サーモスタットもそれぞれに一つづつ接続します。
こちらは少し設定方法や接続方法が複雑なため、使用を検討されている方は『W1209』で検索してみて下さい。詳しい情報を書かれたサイトが多数見つかります。
ペルチェ冷却ユニットの稼働テスト
それでは実際に保冷庫を作成して組み込む前に、各ユニットの作動チェックを兼ねてペルチェ冷却ユニットの性能テストを行ってみます。
テストの為に少し小さめの段ボール箱を用意して、冷却用ヒートシンクが通るだけの穴を開けます。
実はこの時冷却用ファンは取り外してあるのですが、その理由はまた後程ご説明させて頂きます。
そこにペルチェ冷却ユニットをはめ込みます。というより置いてみただけですね。
で、今回は手持ちの装置を使って、バッテリーから直接電気を供給します。
スタート時は24.6℃を表示していますが、みるみる温度が下がっていきます。
今回は小さな段ボール箱を使ったのでここまで下がるのに1分もかからなかったように感じました。
それほど急激に温度が下がってくれたのです。
結露どころか氷はじめていますね。
これは期待が持てそうです。
保冷庫の作成
さて、これで必要な道具は全て揃いましたので、いよいよ保冷庫の作成に取り掛かっていきます。
今回も自作温室の時と同じくカネライトフォームで作成していきますが、設置スペースにも限りがありますので、それに合わせたサイズにしてみました。
また今回は上に少し物を置きたかったため、木で先に枠組みを作りそこにカットしたカネライトフォームを組み込んでいきました。
また温室でも保冷庫でも同じことなのですが、温度をある程度一定に保つ空間を作成するには、素材そのものの厚みと気密性を保つ、つまり隙間なく組み上げていく必要があります。
そこでカネライトフォームの継ぎ目は接着剤を使って接着するのですが、今回はさらに気密性を保つためにこんなものも使ってみました。
これはホームセンターで購入してきましたが、水に強い上に接着力も強くてなかなか良さそうです。
これをカネライトフォームの継ぎ目に貼り付けていきます。
で、ここで余談なんですが、実は保冷庫が完成するまで約1か月の時間を要してしまいました。
そこでやっぱり問題となったのが、気密性と保温性。
いくら冷却ユニットを装着しても、保温能力が低ければ狙った温度まで冷やすこともできず、さらにペルチェ冷却ユニットが一日中稼働してしまうことになります。
それでも問題はないかと思われますが、自作で十分なテスト時間を作ることもできないため、できるだけリスクは回避したいものです。
そしてようやく完成したのがこちら、
前面の扉は取り外し式で、3つの金具は押さえとして使っています。
ちなみに内部はこんな感じです。
上部にはまだまだ余裕があり、棚を追加すればかなりの数の菌糸ビンを置くことができます。上の画像ではXL−POT 800ccを16本置いています。
ところで使っている棚はこちらです。
こちらもホームセンターで購入。
本当に探してみれば、リーズナブルで便利なものが世の中にはたくさんあるものですね。
で、肝心のペルチェ冷却ユニットはこんな感じで取り付けています。
外はこんな感じです。
ペルチェ冷却ユニット取り付け時の注意点
ここでペルチェ冷却ユニットを取り付ける際に気付いた、注意すべき点を少しご紹介しておきます。
1、放熱面と冷却面はできるだけ切り離す。
発熱側と冷却側の遮断が十分に行われていなければ発生した熱気が冷却側に回り込み、本来冷却したい空間に十分な冷気を送ることができなくなってしまいます。
そのため私はカネライトフォームに冷却用ヒートシンクが通るだけの穴を開け、保冷庫内からは放熱用ヒートシンクが全く見えないようにしてあります。(上の画像参照)
2、取り付け方向に注意
基本的に冷気は高いところから低いところへと移動していきます。そのためペルチェ冷却ユニットはできるだけ高い位置に取り付けることが望ましいと思われます。
しかし今回私が使用した2つのユニットには特徴があり、その取り付け位置と角度に注意が必要です。
というのが『冷却フィンの向き』と、『冷却ファンが取り付けられている』ということなのです。
先のテストの際にも記載しましたが、ペルチェ冷却ユニットの冷却フィンには結露水が発生し、それもかなりの量で稼働させているとどんどんと下に垂れて行ってしまいます。
そのため上の画像でご確認いただけるかと思いますが、私はペットボトルをカットした水受けを冷却フィンの下に取り付けています。
この時、フィンは必ず上下の方向に向くようにペルチェ冷却ユニットを取り付け、結露水がどんどん下に垂れるように取り付ける必要があります。
というのも結露水が溜まり過ぎると、冷却能力が下がってしまうという特徴があるからなのです。
また少しでも高い位置に取り付けようとすれば天板から下向きに取り付けることも考えてしまいますが、実はこれもかなりのリスクがあります。
というのも下向きに取り付ければ結露水が全て冷循環ファンに垂れてしまい、あっという間に冷循環ファンを壊してしまう可能性があるからです。
3、放熱用ヒートシンクをできるだけ露出させる
放熱用ヒートシンクは放熱用ファンで冷やされる設計になっていますが、できるだけ風通しの良い場所に露出していることが好ましいです。
ペルチェ冷却ユニットにより高い冷却効果を発揮させるためには、発生した熱をどれだけ効率よく放出させるかがカギとなってきます。
どれだけ能力の高いペルチェ素子を使っても、放熱能力が低ければ本来の性能を発揮できないばかりではなく、最悪の場合はペルチェ素子をあっという間に破壊してしまうということにもなりかねません。
そのため放熱用ヒートシンク及び放熱用ファンは、できるだけ周りに妨げるものがない場所や、カネライトフォームの中に埋め込んでしまわないように取り付ける必要があります。
そういう点からすれば今回の私の取り付け方法は『理想的である』とは言い切れませんが、このような取り付け方法でも私の使用環境においては、今のところ問題はなさそうです。
ただ、これから真夏に向けてもし何か問題が発生するようであれば、変更が必要になってくるかもしれませんね。
自作温室へのペルチェ冷却ユニットの取り付け
現状、主に成虫を保管している自作温室ですが、この1か月ほどは保温の必要もなく、セラミックヒーターも全く稼働していません。ただ最近は日中は30℃近くまで気温が上がってしまうようで、成虫たちのコンディションを考えると、逆に冷却が必要になってきました。
そこでこちらは保冷庫ほど温度を下げる必要はないのですが、カブトムシ・クワガタムシのことを考えると真夏でも28℃前後に温度を押さえたいと思っています。
ということで既に画像にも登場していますが、こちらにもペルチェ冷却ユニットを一つ取り付けてみました。
ペルチェ冷却ユニットの能力は?
さて、気になるペルチェ冷却ユニットを取り付けての自作温室と保冷庫の能力ですが、
- 自作温室=27℃~28℃
- 保冷庫=23.5℃~23.9℃
これを保つようにサーモスタットを設定し、この1か月ほど保冷庫の改良を行いながら作動状況と様子を確認してきました。
すると室内に設置した温度計が31℃を記録した日でも、上記の設定温度を保つことが可能でした。(温度計のメモリーで確認)
自作温室は設定温度が高いため稼働時間も短く、5分ほど稼働して15分ほど止まったままという動作を繰り返しています。
また保冷庫に関しては外気温29℃ぐらいから設定温度に下げるまでは約15分ぐらいの連続稼働が必要ですが、あとは5分稼働、5分休止を常に繰り返しているような状況です。
今後の気温の上昇状況にもよりますが、とりあえずは成功ということにしておきます。
最後に
実はこのところブログの更新が滞っていたのには、保冷庫の構想と作成・検証を行っていたという裏事情(大げさ?^^;)があった訳なのです。
あまりにも急激に気温が上がったため急に迫られたというのが真相です。^^
でもこれで夏の下準備もほぼ整いました。
後は夜間も気温が高い日が続けば、いよいよ待ちに待った採集シーズンの到来です。
今年は果たしてどのようなカブトムシ・クワガタムシに遭遇できるのか?想像するだけでもワクワクしてきますね。
ん?ところで保冷庫があるということは、、、、、
昨年は採集できませんでしたが、ミヤマクワガタもブリード可能ということではありませんか?
カブトムシ・クワガタムシ飼育の『対策』のつもりで温室を作ったり保冷庫を作ったりしていますが、完成すればまたよからぬ考えが浮かんできてしまいます。^^;
まあ、『カブトムシ・クワガタムシ好き』ですので、ここは大目に見てあげて下さい。
<m(__)m>
注)冒頭にも記載しましたが、この記事を読んで『保冷庫を作成してみよう』という方は、十分に注意して作業を行って下さい。
また今回ご紹介したアイテムは私が実際にAmazonで購入し使っておりますが、いずれも海外製品のため商品レビューを見ていると、品質や性能にもかなりの個体差があるようです。
当方では一切責任を持てませんので、その点、ご理解よろしくお願いいたします。
コメント
大変興味深く記事を読ませていただきました。
本記事は冷却に主眼を置かれているかと思いますが、保温(外気温より高くしたい)の時はペルチェユニットをさかさまに取り付ければよいのでしょうか?
一年中22~24℃で管理したいのです。
お時間ある時にご回答いただければ幸甚です。
高志様
コメント誠にありがとうございます。
早速、ご質問の返答です。
確かに仰る通りペルチェユニットを逆さまに設置する、
もしくはペルチェ素子に流す電気を逆転させることで保温することは可能です。
ただこの方法ですと『微妙な温度管理ができない』という欠点があります。
飼育場所の環境にもよりますが、
『極端に暑い・極端に寒い』だけであれば、上記の方法でお好みの温度を保てるかと思います。
ただ実際、このような環境は非常に稀だと思われます。
実際私の場合、飼育場所は生活空間の一部を利用しているため、
どうしても冷暖房の影響を受けてしまいますし、24時間室内を温度管理しているわけではありません。
例えば冬場では人が居る時(暖房をしている時)はそれなりに室温も上がりますが、
人が居ない時はいくら室内と言っても一桁台ま室温が下がってしまいます。
そして飼育室の温度をこまめに観察していると、
そういう環境下では室温以上に上がったり下がったりしてしまうことがほとんどです。
そうすると夏場は冷却のみで温度管理ができることがほぼ可能ですが、
季節の変わり目や冬場はなかなかそういうわけにはいきません。
そのため私はちょうど今頃から飼育室の温度が下がり始める(暖房が必要になる)と、
冷却用のペルチェユニットはそのままにして、市販されているパネルヒーターを増設するようにしています。
そうすれば冷却と暖房が交互に作動することによって、ほぼ希望の温度が保てるようになります。
当然のことながら真冬になれば冷却ユニットは稀にしか作動しませんが、
冷却ユニットをそのまま保温に使う(電気の流れを変えたり、設置しなおす必要がある)よりは、
こちらの方が確実に温度を管理することができ、手間もなく効率的だと思います。
よろしければご参考までに。
早々のご回答ありがとうございます。
やはりそのような運用に落ち着くのですね。
丁度いま、温冷庫を作成しておりまして、ペルチェとパネルヒーターの両運用を考えていた時にこのサイトに辿り着きました。背中を押して頂いた気持ちです。がんばります。
実は私も最初はペルチェユニットでの冷暖房を計画していましたが、
サーモスタットで温度を制御しようとすると、不可能に近いと思います。
『冷房のみ』、『暖房のみ』であれば可能ですが、
冷房と暖房を切り替えるには、、、、
物理的な方法しか思いつきませんでした。^^;
設置場所にもよりますが、私はご紹介させて頂いた方法で、
希望の温度管理ができています。
試行錯誤させるでしょうが、頑張って好みの温冷庫を作成してくださいね。^^